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  • 執筆者の写真鈴木厚本人

枕草子読んだ。

枕草子、途中、鬱病との診断があったりで中断したが、半年ほどで読み終えた。

新潮社日本古典集成(荻谷朴校注)を主に、時々岩波新古典文学大系で。

底本の古態と言われる3巻本系は難解な箇所が多いという。注釈書によって解釈がかなり違うらしく読みづらい。

内容も多岐にわたっていて感想を書くのも難しいのだが、総じて「春はあけぼの」(第一段)ような枕草子と言えば思い浮かぶリズミカルな短い章段よりも何かのエピソードがある比較的長い段が面白かった。

印象に残っているのは、師走中旬に雪が降り、識曹司(当時の中宮定子の御座所。内裏のすぐ外)の庭に雪山を作らせる。

その雪山がいつまで残るかが清少納言が仕える中宮定子(一条天皇第一夫人、藤原道隆の娘、道隆死後に弟道長の娘彰子=紫式部が仕えた=にその座を脅かされる)周辺の話題になる。

他の中宮付き女房達は年内に溶けてしまうだろうと言うが、清少納言一人新年の10余日まであるだろうと主張する。

勝ち気な清少は気をもんで人を使って雪山を守り、監視する。新年15日に雪に和歌を付けて内裏に入内中の中宮に献上するつもり。

果たして14日に清少納言は雪が残っていることを確認するが、その晩、中宮定子が人をやって雪山を取り去ってしまう。

中宮のイジワルに泣きそうになる清少納言。

中宮のお気に入りであることを誇らしく書く段もあるが、こういうのも有ってとてもリアル。

この段には物乞いの卑猥な芸をする尼(注によれば春をひさぐこともあったろう最下層の芸人)も何故かフラフラ登場する。(第82段「雪山の賭」。注釈書によって段の分け方も違う。底本は全部ズラズラつながっている?)

源氏物語は勿論凄い作品で私でも結構夢中になれたが、ロマンが羽ばたきすぎるためか、案外安っぽいな、嘘っぽいなと感じることもあったけど、枕草子にそういうことは全く無く本物感は抜群。

他に、二人とも二十歳前後だが年下の一条天皇と中宮定子が昼間から事に及び始めて、女房達が慌ててその場を離れるエピソードなども面白かった。(どの段だったか失念し、探してみたが確認できず。)

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