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  • 執筆者の写真鈴木厚本人

長谷川毅著「暗闘ースターリン、トルーマンと日本降伏」

2011.05.02 Mon ブログ銀窯日記に投稿

「長谷川毅著 =暗闘=スターリン、トルーマンと日本降伏」とfacebookとtwitterとブログ 色々ゴタゴタ前置きが書かれていたが割愛で必要な点だけ要約すると長谷川毅著「暗闘ースターリン、トルーマンと日本降伏」は吉野作造賞、司馬遼太郎賞、英語版では、Robert Ferrell Award (the Society for Historians of American Foreisn Relations) と言うのを受賞している。(2021/10/11記)

(前略)  もう本当に忙しくなって来てて、丁寧に感想を書いている暇はなくなってしまったので要点のみ。  以下、図書館に返してしまったし、そもそも、読解力、歴史の理解力の問題で以下事実関係に間違いがあるかもしれないことをお断りしておきます。  日本のポツダム宣言受諾については、原爆投下より、ソ連の参戦の方が大きな力となったということが、日、米、ソの史料を丁寧に分析して描かれていて、予備知識のない自分はなるほどと思ってしまったのであるるが、ネットを見ると、批判もあるようであった。  自分が個人的に感心したのは、クリール(千島)諸島をソ連が占領するところ。 実は、クリールでのソ連の軍事行動は、満ソ国境の作戦に比べて、実に杜撰に計画されていて、日本軍よりもソ連軍の戦死者の方が多かったと言う。 確か1800人と1000人ぐらいだったと思う。 初期には奇襲なのに、誰かが勝手に砲撃して日本軍の猛反撃を食らってしまったり、積み荷が重すぎて、上陸艇が水深が2メートルもあるところまでしか近づけず、無線機器が水没して20個もあったうち1つしか使えなくなったり(もしこの最後の一つが水没していたら歴史が変わっていた!!)、9月2日の降伏文書調印後の歯舞占拠では、アメリカの出方を見ながら司令部の指示があるまで待機の命令だったのに、連絡がうまくいかず、現場が勝手に占領してしまったりする。 もし最後まで戦えば、そう簡単には占領されなかっただろうということだ。 実を言うと、このあたりを読んだ時生まれて初めてくらいに、この問題について、悔しさを感じた。惜しいことをしたと。。ちょうど、サッカーの、ドーハの悲劇の時のような気持ち。。。 権謀渦巻く、ヤルタ密約等の帰結として生まれた北方領土問題は、ナショナリズムとも結びついて我々一般人が気軽に話題にも出来ない重っ苦しい話題だが、現場はドタバタであった。。 ソ連軍のずぼらがアメリカの黙認(ヤルタで約束してしまったから仕方ねーなという感じ)と日本軍の大本営の指令に律儀に服して整然と投降するまじめさに助けられて運良く占領してしまうこのクリール占領の章は、生き生きと描かれていて、正直面白かった。 この章は、この入り組んだ書物に一種のカタルシスをもたらしている気さえした。 北方領土については、内容はほとんど忘れてしまったが、歴史的に見て我が国固有の領土であると説明されていた。 スターリンも返還ではなく占拠であることを理解していて用心しいしいの作戦ではあったようだ。  日、米、ソの代表的為政者ついては概ね、事実のみをあまり論評なく描かれていて、読み進めるうちに、例えばスターリンの小心なんだか大胆なんだかよく分からない怪物的な性格、トルーマンの癇癪持ちみたいに、自然とその人の癖みたいのがよく分かってくるという感じだった。  ポツダム宣言受諾間近に、戦争継続派の出すメッセージがアメリカに伝わらないようにとっさの機転を利かせる、日本の無名の事務方、新聞記者などが、ほんの片隅に記述されており、美しく印象に残っている。




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